近年、企業間で秘密保持契約(機密保持契約)、共同開発契約等を締結して他社と共同で仕事をする機会が増えています。そして、この契約の秘密保持の項目は、その内容を理解しないと、大変な問題を発生させる危険があります。ここでは、安易に締結されているこれらの契約の問題点と自衛策について説明します。

 

 1.秘密保持条項の問題点 

  • 秘密保持契約(機密保持契約)、共同開発契約等の秘密(機密)保持条項のどこに問題点があるかというと、秘密保持の例外条項に「相手方より開示または提供を受けたときに既に自己が所有していたことを明らかにできる情報」という条項があり、その中の「自己が所有していたことを明らかにできる情報」という部分が問題となります。自己が所有していたことを立証するというのは、簡単なことだと勘違いされている方が多いのですが、社内にある報告書等の書類は公的な日付が無いため、自己が所有していたことを立証する事はできません。そのため、この勘違いにより、相手方と問題が発生したときに、自己が所有していたことを立証することができず、自社の保有していた技術が秘密情報となってしまい、自由に使えないという最悪の事態が発生します。

 2.公的な日付のある書類とは 
  • 公的な日付のある書類とは「確定日付の手続きを行った書類」の事です。郵便局の消印のある書類も公的な日付のある書類といえますが、最悪の場合は裁判になることを考慮すると確定日付の手続きを行った方が良いと思います。

 3.自社の保有する技術を保護するには 

  • 自社の保有する技術を保護するにはどのようにすれば良いのでしょうか。その一例を下記に示します。
  1. 新製品の図面は必ず確定日付の手続きを行って下さい。
  2. 新しい生産設備はその図面、取扱説明書、写真等をまとめて確定日付の手続きを行って下さい。
  3. 研究や開発が終了した時の報告書をまとめ、確定日付の手続きを行って下さい。
  4. 秘密保持契約等を締結する前に関連する技術書類を集めて、確定日付の手続きを行って下さい。

以上のような事を行えば自社技術の保護は行えます。つまり、自社の保有する技術の保護とは従来から行われているノウハウ保護を確実に行えば良いだけなのです。ただし、このような自社技術の保護は、会社の業務システムの中で行われるようにしないと、情報不足や連絡ミス等により、情報が保護されなかったりするので、担当者を一人決めて、その担当者一人にすべてを行わせないように、注意して下さい。