他社と共同出願を行い、その出願が登録となり共有特許となった場合、お互いの権利関係はどのようになるでしょうか。A社とB社が共有特許を保有している場合を例に書いてみます。

 1.A社とB社の自己実施 

共有特許の場合、各共有権者は特約(特別な契約条項)がない限り、他の共有権者に無償で特許発明を実施できます。つまり、A社とB社はお互い自由に特許発明を実施する事ができます。しかし、共同出願契約等にお互いの実施を制限する条項等が入っていた場合は、その契約条項に従った実施となります。例えば、自己実施の範囲を自己の持ち株率の50%以上の子会社まで認めさせるとか、A社が製造しB社が販売する等のいろいろなケースがあります。この自己実施において問題となるのが下請けを使っての自己実施です。例えば、A社がC社を下請けとして製造させた場合、B社はA社の行為を第三者の実施と判断する場合が有り、下請けの定義がしっかりとなされていない場合は、問題が発生する場合があります。

 2.第三者への実施許諾 

共同開発の成果である共有特許の第三者への実施許諾は、特許法第73条により、相手方の承認が必要となります。第三者への実施許諾で問題になる場合としては。A社とB社が装置Xの共有特許を持っており、A社が装置Xの部品メーカー、B社が装置Xの製造販売メーカーであると仮定します。A社はC社に共有特許に該当する部品を納め、C社はその部品で装置Xを組み立て販売している場合です。この場合は、A社とB社が話し合いを行い、B社にロイヤリティを支払い、C社の実施を許諾してもらうことになりますが、B社が許諾しなければC社はA社の部品を使用した装置Xの製造販売ができなくなります。このような場合は、A社が部品ではなく装置Xを製造しC社に販売すれば、共有特許の第三者への実施許諾の問題は発生しません。